銘柄分析

【長期投資家必見!】高配当株ウォルグリーンブーツアライアンス(WBA)の銘柄分析と見通しを解説

米国の高配当株でおすすめの銘柄ってある?

ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは高配当で株価も下がっていて安く買えそうだけど、どうなんだろう?

ここでは、そんな人たちに向けて、米国最大級のドラッグストアチェーンを展開する、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)の事業内容や財務数値を分析していきます。

銘柄を選ぶ際のヒントに少しでもなれば幸いです。

この記事では、WBAが長期投資に適しているか、以下の点から分析します。

WBAの事業内容、競争優位性
WBAのこれまでの業績
配当を含むこれまでの投資リターンや株価の考察

その他の銘柄に関する分析はこちらから

自己紹介

YY

ブログ運営者のYYです。記事をご覧いただきありがとうございます。
米国個別株やインデックスの長期投資を中心に運用しています。会計士の知識を生かした個別株の銘柄分析や、自身の失敗を踏まえた長期投資での気づなど、役立つ情報をブログにまとめていますので、よろしければ他の記事もご覧になってください。

分析の前提・注意点

この記事に記載した内容は、私個人ができる範囲で調べた情報を載せ、個人的な意見をまとめたものであるため、参考として、エンタメ的に楽しんでいただければと思います。
こちらの記事をきっかけに興味を持った銘柄があれば深掘りして調べていただき、より理解が深まれば幸いです。

使用した情報・分析手法は、年次報告書に記載されている決算数値や、一般に公表されている情報を用い、シンプルな分析を行っています。正確でない用語や数値が使われているかも知れませんが、ご容赦ください。

四半期の数値は短期の変動やブレが入るため、考慮していません。

紹介した銘柄について、将来の業績や株価についての言及がある可能性がありますが、その業績や株価を保証するものではありません。
また、その銘柄の保有や売買を勧めるものでは無く、売買はご自身で判断ください。

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結論

まず、この銘柄が長期保有に適しているか、これからお話しする内容を踏まえた結論から言うと、

5%を超える配当利回りと株価は魅力的にも見えるが業績が不安定で今後が不透明。利回りは多少低くても着実に成長している他の銘柄を狙いたい

(ポイント)
国内薬品小売りから海外、ヘルスケアと事業を拡大
中核事業の収益性落ち、業績の見通しが不透明
配当利回りは高いが、過去の投資リターンはS&P500を下回る

と考えています。

ちなみに、比較的高い配当と株価の成長が見込める銘柄として、ジョンソン・エンド・ジョンソンやマクドナルド、P&Gについて、こちらの記事で紹介しています。

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判断の理由や具体的なポイントについては、以降でお話します。

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事業の分析

ここでは、企業情報や事業構成などの事業内容について分析します。

ポイント:
米国のドラッグストアチェーン事業が中核
英国ブーツ・アライアンスの買収、ヘルスケア立ち上げなど拡大路線をとる

企業情報

WBAの始まりは1901年まで遡ります。

創業者であるチャールズ・ウォルグリーンは、薬剤師として働いていたシカゴのドラッグストアを買い取ったのち、1909年に第2号店を開いてチェーン展開したことがきっかけです。

1934年にはニューヨーク証券取引所に上場し、いまや米国やイギリスを中心に、世界中に13,000以上ものドラッグストアを有する世界最大級の薬品小売チェーンに成長しています。

2018年に、米国マーケットを代表する株式指数であるダウ工業株30種平均の構成銘柄として選ばれました。

業種ヘルスケア、薬品小売
ティッカーWBA
取引市場NYSE(ニューヨーク証券取引所)
指数ダウ工業株30種、S&P500、ナスダック100
時価総額271億ドル
決算期8月
創業1901年
上場1934年
本社所在地イリノイ州、ディアフィールド
CEOロザリンド・ブルーワー
従業員数200,000人

事業内容

WBAの事業は米国内でのドラッグストアでの薬品販売が中心で、2022年の売上80%以上を占めています。

このような事業構成に至るまでの主な出来事について、簡単に触れておきます。

① 英国アライアンス・ブーツの買収

ウォルグリーンは、英国でドラッグストアチェーンと美容サービスを展開するアライアンス・ブーツと2012年に戦略的提携を結び、同社の株式を45%取得しました。

その後、2014年にはアライアンス・ブーツを完全子会社化、社名を現在のウォルグリーン・アライアンス・ブーツに変更しました。

これにより、米国の薬局チェーンが中心だったWBAのポートフォリオに、国際事業が加わることとなりました。

② ヘルスケア事業の立ち上げ

また、薬局ネットワークを活用した関連サービスの拡充に向け、2021年から2022年にかけて、ビレッジ、シールズ、ケア・セントリックスの3社を買収し、ヘルスケア事業にも参入していきます。

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業績の分析

ここではWBAの過去の財務諸表から業績を分析していきます。

ポイント:
中核の米国薬品小売事業は薬価引き下げ圧力で収益力に懸念
国際事業も不透明。ヘルスケア事業も立ち上げたばかりで赤字

※ことわりが無い限り、以降の数値データは年次報告書(10-K)の情報を使用しています。

業績は不安定

2022年までの過去20年間の売上・純利益などの主要な損益指標を見ていきましょう。

売上は増加傾向にありますが、営業利益、当期純利益は2019年頃から大きく落ち込んでいます

特に営業利益は、企業の基礎的な収益力に関わってくるところであり、これが弱いと株価にも大きく影響するため、詳しく見ていきましょう。

また、当期純利益についても、直近の2022年決算では回復しているようにも見えますが、対して営業利益が再び落ちている点との関係が気になります。

① 営業利益の低迷要因は主に2つ

まず、営業利益を見てみましょう。

下のグラフは、2022年までの10年間の営業利益の内訳を事業別に示したものです。

(同社の年次報告書より。2018年以前はホールセール事業が独立していたが、2019年から国際事業に含まれているため、2018年以前の数値もグラフ上は合算して表示)

WBAの事業は米国薬局小売、国際事業、ヘルスケアに分かれますが、2019年以降の営業利益の落ち込みは、これら全てに要因がありそうです。

ただし、ヘルスケアは2021年に立ち上げたばかりで当初の赤字はありえるため、いったん議論からは外します。

i. 薬価引き下げ圧力(米国薬局小売)

2020年~2022年の年次報告書で、営業利益低迷の要因として、共通して挙がっているのが「米国における薬価引き下げ圧力」です。

アメリカでは医療費の高騰が深刻な問題となっており、バイデン大統領は薬価の引き下げを公約に掲げ、国民の医療費を抑えつつ良質な医療サービスを提供できる仕組み作りを急いでいます。

これには製薬業界からも大きな反発があるようですが、2022年8月には処方薬の負担軽減策を盛り込んだ「インフレ抑制法案」が成立しました。

従来は禁止されていた処方薬の価格交渉が2026年から一部の製品で可能となるようです。

>日経記事「米国の歳出・歳入法、製薬各社に値下げ圧力 反発も強く」

今後どのような影響が出てくるかは分かりませんが、このような流れを受けて利益率が低下傾向にある薬局小売事業で逆に上げていくのは難しくなりそうですね。

ii. 英国における小売ビジネスの収益性が低下か(国際事業)

国際事業の営業利益が減少は、売上自体の減少や為替変動の影響を含め、いくつか要因がありそうです。

特に営業利益がマイナスになっている2020年、2022年は、減少要因として英国ブーツ部門における無形資産の減損費用が挙げられています。

減損は関連するビジネスの将来収益が悪くなった場合に計上するものです。

詳細は触れられていませんが、海外の主要部門の一つであるブーツにおける見通し悪化は気がかりな点の一つです。

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② 2022年の純利益回復は一時的要因によるもの

2022年の純利益は約43億ドル(前年比+18億ドル)を計上していますが、年次報告書によると、このうち25億ドルはビレッジとシールズ株式の評価替えによるものとのことです。

具体的な会計処理がいまいち分かりませんが、完全子会社化したことによりこれらの事業を時価評価で取り込んだのではないかと思われます。

いずれにせよ、この利益は一時的なものであり、営業利益で見たとおり本業の収益力は落ちているといえます。

③ 利益率は低下傾向

ここでは、以下の3つの収益指標を見ていきます。

  • 粗利益率:(売上-売上原価)÷売上
  • 営業利益率:営業利益(売上利益 ー 販管費)÷ 売上
  • 売上純利益率:当期純利益 ÷ 売上

他社との競争による値下げやコスト増加など、競争優位性に大きな問題が生じていれば、利益率にも変化が出てくると考えられます。

米国薬品小売の営業利益でも触れたように、薬価引き下げの圧力によってジリジリと利益率が落ちている様子が分かります。

投資リターン・株価の分析

最後に、投資リターンについて整理します。

ポイント:
投資リターンはS&P500指数を大きく劣後
予想PER6倍は安い、配当利回り6%は魅力的
ただし市場の期待が低いことの裏返しともとれる。業績安定までは見送りたい

投資リターンはS&P500指数に大きく劣後

ここでは、期間を区切って投資リターン(配当込みのパフォーマンス)をS&P500指数と比較します。

下の表とグラフは2022年12月末までの期間におけるリターン(月足)を比較したものです。

業績が不安定な点を懸念し、5年、10年、20年のいずれの期間でもS&P500指数を大きく下回っています。

特に直近の5年間は配当込みでもリターンがマイナスになってしまっている状態です。

5年10年20年
WBA▲41%+21%+91%
S&P500+44%+172%+376%

【投資期間5年】

(Tradingviewより)

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【投資期間10年】

(Tradingviewより)

【投資期間20年】

アライアンス・ブーツを子会社化した2014年頃まではパフォーマンスも良かったのですが、その後の利益率の落ち込みとともに低迷していきます。

(Tradingviewより)

配当利回りは高いが…

2023年5月時点での予想配当利回りは約6%であり、かなり高めの水準です。

また、下のグラフは、過去20年間の1株当たり当期純利益(EPS)と1株当たり配当の推移を示したものです。

増配を続けていること、EPSとの比較でこれまでは配当余力が十分にあることが分かります。

ただし、業績の分析でも触れたように、本業の収益に不透明な点が多いことや、2022年の純利益は一時的な要因が大きいことを踏まえると、見た目の高配当を楽観視できないと個人的には思います。

現在の株価と今後の見通し

WBAの2023年5月現在の予想PER(2024年の予想EPSに基づく)は6倍であり、S&P500指数の17~18倍と比較すると、かなり割安な水準です。

何も考えなければ飛びつくぐらい、びっくりする安さですね。。。

同社の歴史的なPER水準から見ても割安なので、ここで少し買ってみるという選択肢もあるとは思います。

ただ、不振の英国ブーツ事業を売却する噂も上がっていたりする中、業績が安定するまでは投資は見送った方が賢明かなと個人的には考えています。

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まとめ

ここまで、WBAの事業内容、業績、投資リターンと、今後の見込みについて見てきました。

総合すると、WBAの高利回りと割安なPERは魅力的であるものの、業績が不安定であり、買うなら高配当と成長が狙える他の銘柄(J&J、P&G、マクドナルドなど)がよいのではないかと考えています。

このような銘柄分析のほか、銘柄の選び方や投資の勉強方法など、投資を始めたばかりの方に向けて有益な情報をまとめています。

ぜひご覧ください。

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※この記事に記載した内容はブログ運営者の個人的な意見やアイディアを述べたものであり、専門的なアドバイスを示すものではありません。特定の銘柄への投資を推奨するものではなく、投資の判断・実行は自己責任でお願いします。