銘柄分析

ECの巨人アマゾン(AMZN)は長期投資向き?決算から分析します。

最近GAFAMが好調だって聞くけど、その中でもアマゾンはどうなのかな?

アマゾンの事業内容とか業績を知らないから、簡単に知りたいな。

ここでは、そんな人たちに向けて、世界最大級のネット小売企業、アマゾン(AMZN)の事業内容や財務数値、株価を分析していきます。

銘柄を選ぶ際のヒントに少しでもなれば幸いです。

この記事では、アマゾンが長期投資に適しているか、以下の点から分析します。

事業内容や、競争優位性
これまでの業績
配当を含むこれまでの投資リターンや株価の考察

その他の銘柄に関する分析はこちらから

自己紹介

YY

ブログ運営者のYYです。記事をご覧いただきありがとうございます。
米国個別株やインデックスの長期投資を中心に運用しています。会計士の知識を生かした個別株の銘柄分析や、自身の失敗を踏まえた長期投資での気づなど、役立つ情報をブログにまとめていますので、よろしければ他の記事もご覧になってください。

分析の前提・注意点

この記事に記載した内容は、私個人ができる範囲で調べた情報を載せ、個人的な意見をまとめたものであるため、参考として、エンタメ的に楽しんでいただければと思います。
こちらの記事をきっかけに興味を持った銘柄があれば深掘りして調べていただき、より理解が深まれば幸いです。

使用した情報・分析手法は、年次報告書に記載されている決算数値や、一般に公表されている情報を用い、シンプルな分析を行っています。正確でない用語や数値が使われているかも知れませんが、ご容赦ください。

四半期の数値は短期の変動やブレが入るため、考慮していません。

紹介した銘柄について、将来の業績や株価についての言及がある可能性がありますが、その業績や株価を保証するものではありません。
また、その銘柄の保有や売買を勧めるものでは無く、売買はご自身で判断ください。

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結論

まず、この銘柄が長期保有に適しているか、これからお話しする内容を踏まえた結論から言うと、

収益の大半を占めるEC事業は独り勝ちだが利益率が未だ低く、ビッグテックであれば、アップルやマイクロソフトなど競合優位性が明確な銘柄を選びたい

(ポイント)
売上の8割を占めるEC事業は、急速成長も赤字気味
クラウドサービスは高利益率だが、成長率が鈍化
PER70倍超と将来期待は高いが、ビッグテックでより確実な銘柄を選びたい

と考えています。

例えば、PCハード、ソフトで競合優位性が高く、クラウド事業も安定して伸びているマイクロソフトの方が個人的には良いかなと考えています。

マイクロソフト(MSFT)は長期投資に適しているか?決算から見る競争優位性と今後の見通し マイクロソフトって人気銘柄らしいけど、そもそもどんなことやってるの? マイクロソフトの株価が今後も上がるのか知りたい。 ...

あくまでも、私個人の意見である点はご理解ください。

判断の理由や具体的なポイントについては、以降でお話します。

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事業の分析

ここでは、企業情報や事業構成などの事業内容について分析します。

ポイント:
世界最大級のネット小売企業
クラウドサービスのAWSも成長

企業情報

業種一般消費財、ネット小売
ティッカーAMZN
取引市場Nasdaq
採用指数S&P500、ナスダック100
時価総額1,3250億ドル
決算期12月
創業1994年
上場1997年
本社所在地ワシントン州、シアトル
CEOアンディ・ジャシー
従業員数1,541,000人

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事業内容

アマゾンは、書籍のほか、日用品や家電なども販売する世界最大級のネット小売企業です。

EC事業(北米・海外セグメント)が売上の8割以上を占めますが、ここ数年はクラウド事業(AWS:アマゾン・ウェブ・サービス)も売上を伸ばしています。

売上の大半はアメリカで上げています。

業績の分析

ここではアマゾンの過去の財務諸表から業績を分析していきます。

ポイント:
売上は急成長も利益が追い付かず
収益の8割を占めるEC事業の赤字が挽回できるか、今後注視が必要

※ことわりが無い限り、以降の数値データは年次報告書(10-K)の情報を使用しています。

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売上は急成長も、利益が追い付かず

2022年までの過去20年間の売上・純利益などの主要な損益指標を見ていきます。

多くの方がご存じのとおり、書籍のネット販売があらゆる商品を取り扱うEC(ネット小売)事業に拡大し、直近のコロナ禍での外出制限も相まってで利用が急増しました。

その結果、20年前とは比較にならない売上規模に成長しています。

(各年の年次報告書から作成)

ただ、先行投資が多いこともあり、営業利益や純利益は売上と比例する形では伸びていません。

特に、ここ1、2年は売上増加にも関わらず、利益が大きく落ち込んでいます。

利益が落ち込んでいる要因は、EC事業の不振と、リヴィアン株の評価損です。

EC事業については、この後でもう少し詳しく見ていきます。

リヴィアン株の評価:

アマゾンはリヴィアン株への投資に係る評価損益を損益計算書に計上しています。
2021年はご存じのとおり投資環境が良かったため、118億ドルの評価益を計上しましたが、2022年は一転して厳しい投資環境となり、127億ドルの評価損を計上しました。
そのため、上のグラフの2021年の純利益が大きく伸び、逆に2022年は大きく落ちています。

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① ここ数年のEC事業は赤字傾向

下のグラフはアマゾンの事業別の営業利益の推移を示したものです。

ECの北米、海外と、アマゾンウェブサービス(AWS)の3つの事業から構成されています。

このうち、海外はここ数年赤字が毎年のように出ており、2022年は大幅赤字となりました。

また、2022年は北米も赤転し、結果として全体の営業利益(グレーの点線)が大きく落ち込むこととなりました。

北米、海外合計で売上の8割以上を占めるEC事業の営業赤字は、同社の基幹ビジネスの将来性に疑念を生じさせるものとなりそうです。

現時点では、AWSの利益成長で穴埋めできているようにも見えますが、EC事業の今後に注視が必要です。

(各年の年次報告書から作成)

② 利益率は概ね一定水準を維持

過去20年間の利益率(下の3指標)を見てみます。

  • 粗利益率:(売上-売上原価)÷売上
  • 営業利益率:営業利益(売上利益 ー 販管費)÷ 売上
  • 売上純利益率:当期純利益 ÷ 売上

他社との競争による値下げやコスト増加など、競争優位性に大きな問題が生じていれば、利益率にも変化が出てくると考えられます。

利益率の高いAWS事業がここ10年は成長していることもあり、粗利益率は改善しています。

ただ、トータルでの売上純利益率はあまり変化はありません。

(各年の年次報告書から作成)

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③ 2022年はリヴィアン評価損で純損失計上

下のグラフは当期純利益と1株当たり当期純利益(EPS)の推移を示したものです。

2022年は先ほど触れたリヴィアンの評価損が影響し純損失を計上していますが、このイレギュラーな項目を除けば伸びています。

投資リターン・株価の分析

最後に、投資リターンについて整理します。

ポイント:
長期リターンはS&P500指数を大きくアウトパフォーム。ここ最近は指数並み
要のクラウド事業はトップシェアを誇るが、成長率は鈍化

長期ではS&P500指数を大きくアウトパフォーム

ここでは、直近の年度決算月である2022年12月までの配当込みの投資リターン(チャートは月足)をS&P500指数などと比較します。

リターンは20年、10年、5年、いずれの期間でもS&P500指数やセクター平均をアウトパフォームしています。

ただし、ここ数年はあまり奮っておらず、セクター指数には負けている状況です。

銘柄・指数5年10年20年
アマゾン+42%+677%+9340%
テクノロジーセクター指数(XLK)+110%+435%+1132%
S&P500指数+44%+172%+376%

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【投資期間5年】

(Trading Viewより)

【投資期間10年】

(Trading Viewより)

【投資期間20年】

(Trading Viewより)

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配当実績なし

アマゾンは成長に向けた事業投資を重視しているためか、これまで配当実績はありません。

一方で、利益が思ったように出ておらず、配当原資が無いことも要因になっているのではないかと思います。

現在の株価と今後の見通し

2023年7月現在の予想PER(2023年の予想EPSに基づく)は約75倍とS&P500指数のPER20倍と比べるとかなり高めです。

ただし、同社のこれまでの予想PERが概ね60~90倍であることを踏まえると、そこまで割高感はありません

他のアップルやマイクロソフトなどのビッグテック(2社とも30倍程度)と比べても高く、将来成長を織り込んだ株価といえるでしょう。

今後の成長余地

アマゾンの事業のうち、ECについては低収益体質が問題にあることは先ほど触れました。

ここでは、利益率が高く成長が見込まれているAWSの成長余地について見ていきます。

下のグラフは、クラウドサービスを行っている3社(アマゾン、マイクロソフト、グーグル)の、関連する製品、部門の年間売上の推移を示したものです。

(アマゾンはAWS、グーグルはGoogle Cloud。マイクロソフトのみ、Azure以外のサーバー製品を含むサーバー事業の売上)

こう見ると、アマゾンのAWSは先行していたマイクロソフトを追い抜き、売上ベースではクラウドサービスでトップのシェアを持っています。

一方で、成長率(折れ線グラフ)で見ると、AWSは徐々に失速しているようにも見えます。

対してマイクロソフトは売上成長率はそれほど高くないものの、2018年以降は一定水準を維持しています。

今後もそれほど落ちず、手堅い成長を見せてくれそうな期待感があります。

アマゾンAWSのシェアを重視するか、マイクロソフトの安定性を重視するかで結論は変わりそうですが、個人的にはマイクロソフトの手堅さを取りたいですね。

ただ、この辺りは正直好みの問題だと思います。

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まとめ

ここまで、アマゾンの事業内容、業績、投資リターンと、今後の見込みについて見てきました。

総合すると、EC事業の利益率改善がきちんと見えるまでは、ビッグテックであれば他に競合優位性がある他の銘柄を選びたいと考えています。

このような銘柄分析のほか、銘柄の選び方や投資の勉強方法など、投資を始めたばかりの方に向けて有益な情報をまとめています。

ぜひご覧ください。

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