銘柄分析

米国株ホームデポ(HD)は長期投資向き?決算から読み解く成長の不確実性

NYダウ銘柄のホームデポって、長期投資向きなのかな?

ホームデポの事業内容とか業績を知らないから、簡単に知りたいな。

ここでは、そんな人たちに向けて、世界最大級のホームセンターである、ホームデポ(HD)の事業内容や財務数値、株価を分析していきます。

銘柄を選ぶ際のヒントに少しでもなれば幸いです。

この記事では、ホームデポが長期投資に適しているか、以下の点から分析します。

事業内容や、競争優位性
これまでの業績
配当を含むこれまでの投資リターンや株価の考察

その他の銘柄に関する分析はこちらから

自己紹介

YY

ブログ運営者のYYです。記事をご覧いただきありがとうございます。
米国個別株やインデックスの長期投資を中心に運用しています。会計士の知識を生かした個別株の銘柄分析や、自身の失敗を踏まえた長期投資での気づなど、役立つ情報をブログにまとめていますので、よろしければ他の記事もご覧になってください。

分析の前提・注意点

この記事に記載した内容は、私個人ができる範囲で調べた情報を載せ、個人的な意見をまとめたものであるため、参考として、エンタメ的に楽しんでいただければと思います。
こちらの記事をきっかけに興味を持った銘柄があれば深掘りして調べていただき、より理解が深まれば幸いです。

使用した情報・分析手法は、年次報告書に記載されている決算数値や、一般に公表されている情報を用い、シンプルな分析を行っています。正確でない用語や数値が使われているかも知れませんが、ご容赦ください。

四半期の数値は短期の変動やブレが入るため、考慮していません。

紹介した銘柄について、将来の業績や株価についての言及がある可能性がありますが、その業績や株価を保証するものではありません。
また、その銘柄の保有や売買を勧めるものでは無く、売買はご自身で判断ください。

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結論

まず、この銘柄が長期保有に適しているか、これからお話しする内容を踏まえた結論から言うと、

ホームセンターでは売上首位で優位性はあるが、今後の成長余地を考えると小売の中でもより高い成長が見込める銘柄を選びたい安定重視の配当銘柄としてはアリ

(ポイント)
世界最大級のホームセンター
2021年、2022年はコロナ特需も手伝い業績拡大
20年間で株価は+1800%と夢は膨らむが、今後も同様の成長は厳しいか

と考えています。

例えば、コストコは国内・国外で現在も店舗を拡大し、高い成長を続けています。

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あくまでも、私個人の意見である点はご理解ください。

判断の理由や具体的なポイントについては、以降でお話します。

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事業の分析

ここでは、企業情報や事業構成などの事業内容について分析します。

ポイント:
ホームセンターとしては世界最大級
競合ロウズを大きくリード

企業情報

ホームデポは、建築資材や工具、家具、ガーデニング用品など、DIYに関連するあらゆる商品を販売する世界最大級のホームセンターです。

1999年からNYダウに採用されています。

業種一般消費財、ホームセンター
ティッカーHD
取引市場NYSE
採用指数S&P500、NYダウ
時価総額3,182億ドル
決算期1月
創業1978年
上場1984年
本社所在地ジョージア州、アトランタ
CEOエドワード・デッカー
従業員数475,000人

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事業内容

ここでは、ホームデポの事業内容に触れていきます。

① 建築現場やDIY向けの資材・製品を販売

日本でよく見かけるホームセンターと同様の資材・製品を取り扱っているようです。

(各年の年次報告書より作成)

② 現在はアメリカ大陸で店舗を展開

米国を中心に、カナダ、メキシコといったアメリカ大陸のみで店舗を展開しています。

店舗数
米国2,007
カナダ182
メキシコ133
2,322

2012年までは中国にも7店舗ありましたが、撤退しています。

背景に、中国の文化と同社のDIY向け製品のミスマッチ、中国市場の減速見込みなどがあるようです。

>>米ホーム・デポ、中国の店舗事業撤退 7店閉鎖し850人解雇(日経)

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③ 競合ロウズをリード

米国のホームセンターではロウズが競合ですが、売上、店舗数では一歩リードしています。

また、営業利益率もホームデポの方が高く、競争優位性は高いと言えそうです。

予想PERだけを見るとロウズの方が割安にも見えますが、ホームデポの方が投資家からの期待が高い証でもあります。

アメリカの著名投資家ジム・クレイマーは、PERが高くても業界No.1を選ぶべきといっています。

PERが高いのには、ビジネスモデルが良くできている、経営陣が素晴らしいなど、何らかの要因があるはずで、PERが低いからと飛びつくと損をすることになる、ということです。

業績の分析

ここではホームデポの過去の財務諸表から業績を分析していきます。

ポイント:
業績は一時期低迷も、コロナ特需も手伝い拡大

※ことわりが無い限り、以降の数値データは年次報告書(10-K)の情報を使用しています。

2000年代は低迷も、2010年から拡大

2023年までの過去20年間の売上・純利益などの主要な損益指標を見ていきます。

2000年代は中国からの撤退、女性向けのデザイン性を重視したEXPOデザインセンターの閉業などもあり、業績が低迷しました。

その後は徐々に回復し、特に2021年、2022年はコロナ禍で人々の外出が減り家で過ごす時間が増え、住宅改修熱が高まったことで、売上を大きく伸ばしています。

このコロナ特需の反動で、2023年は以前の成長スピードに戻っています。

売上は20年間で約2.5倍、純利益は約4倍に成長しています。

(各年の年次報告書から作成)

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① 売上効率が大きく改善

下のグラフは過去20年間におけるの年度末の店舗数とその店舗数で売上高を割った1店舗当たり売上高の推移を示したものです。

店舗数は2,200を超えてからは微増に留まっていますが、店舗当たり売上高は最低時の2010年と比較すると2倍以上に増えていることが分かります。

(各年の年次報告書から作成)

② 利益率は一時期の落ち込みから回復

次に、過去20年間の利益率(下の3指標)を見てみます。

  • 粗利益率:(売上-売上原価)÷売上
  • 営業利益率:営業利益(売上利益 ー 販管費)÷ 売上
  • 売上純利益率:当期純利益 ÷ 売上

他社との競争による値下げやコスト増加など、競争優位性に大きな問題が生じていれば、利益率にも変化が出てくると考えられます。

営業利益率、純利益率が2000年代後半に落ち込んでいますが、その後持ち直しています。

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③ 1株当たり純利益は20年間で約9倍

下のグラフは当期純利益と1株当たり当期純利益(EPS)の推移を示したものです。

EPSは20年間で約9倍の水準になっています。

2004年:1.88ドル → 2023年:16.69ドル

投資リターン・株価の分析

最後に、投資リターンについて整理します。

ポイント:
長期リターンはS&P500指数を大きくアウトパフォーム。ここ最近は並み
今後の成長余地は不透明

長期ではS&P500指数を大きくアウトパフォーム

ここでは、直近の年度決算月である2023年1月までの配当込みの投資リターン(チャートは月足)をS&P500指数などと比較します。

リターンは20年、10年、5年、いずれの期間でもS&P500指数やセクター平均をアウトパフォームしています。

ただし、ここ数年はあまり奮っていないように見えます。

銘柄・指数5年10年20年
ホームデポ+86%+429%+1,886%
一般消費財セクター指数(XLP)+55%+134%+534%
S&P500指数+50%+153%+372%

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【投資期間5年】

(Trading Viewより)

【投資期間10年】

(Trading Viewより)

【投資期間20年】

(Trading Viewより)

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配当利回りは高め

2023年7月時点での予想配当利回りは約2.7%で、割と高めです。

下のグラフは、過去20年間の1株当たり当期純利益(EPS)と1株当たり配当の推移を示したものです。

業績が伸び悩んでいる時期は何度か小幅な減配をしていますが、長期的には利益の伸びと共に配当も増えています。

現在の株価と今後の見通し

2023年7月現在の予想PER(2023年の予想EPSに基づく)は約21倍です。

同社のこれまでの予想PERが概ね15~20倍であることを踏まえると、そこまで割高では無さそうです。

今後の成長余地

ここまでは高い投資パフォーマンスを見せてきたホームデポですが、今後もこの成長が見込めるかというと、私は不透明だと考えています。

まず、こういった小売業態で業績拡大していくためには、店舗数か店舗当たり売上を増やす必要があります。

同社の店舗数は先ほども触れたとおり、2010年代からほぼ横ばいで伸びておらず、長らく新しい地域にも進出していません。

中国からの撤退も踏まえると、スーパーなどの一般小売と比べ、ホームセンターは売っている商品の特性から、その国にDIY文化が根付いているかに大きく左右されるように思います。

そうした時に、今後国内・国外で大きなニーズが見込めるか、という問題があります。

売上効率についても、どこまでも際限なく向上できるわけではないでしょうし、今後さらに改善していくのはハードルが高いのではないかと思われます。

小売なら、成長が見込まれるコストコの方が好み

小売で選ぶのであれば、個人的には、より業績拡大が見込まれるコストコの方が好みです。

コストコは現在もアメリカを中心に、国内外で店舗数を増やし続けています。

PERは高いですが、それだけ投資家の期待も高いと言えます。

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まとめ

ここまで、ホームデポの事業内容、業績、投資リターンと、今後の見込みについて見てきました。

総合すると、ホームセンターでは売上首位で優位性を築いているものの、今後の成長余地を考えると小売の中でもコストコなど他の銘柄を選びたいと考えています。

このような銘柄分析のほか、銘柄の選び方や投資の勉強方法など、投資を始めたばかりの方に向けて有益な情報をまとめています。

ぜひご覧ください。

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