個別株への長期投資における原則の一つと言われるのが「分散投資」ですが、実際に組み込む銘柄をどう選ぶか、なかなか難しいですよね。
「ハイテク銘柄に集中投資してしまって大きな含み損を抱えてしまった」
「ディフェンシブや高配当銘柄で固めて下落はしないんだけど全然上昇が取れない」
こんな悩みを持つ人も結構多いのではないでしょうか。
今回は、アメリカの著名投資家、ジム・クレイマーが紹介している、面白い切り口でのポートフォリオの作り方を紹介したいと思います。
簡単な自己紹介
ブログ運営者のYYです。記事をご覧いただきありがとうございます。
米国個別株やインデックスの長期投資を中心に運用しています。会計士の知識を生かした個別株の銘柄分析や、自身の失敗を踏まえた長期投資での気づなど、役立つ情報をブログにまとめていますので、よろしければ他の記事もご覧になってください。
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米国株投資をしていれば、ジム・クレイマーの名前は耳にしたことがあるかと思いますが、彼が書いたヒット書籍の一つ「ジム・クレイマーの株式投資大作戦」(2006年出版)で、長期投資における株式ポートフォリオの組み立て方について説明しているので、この内容を紹介します。
今から10年以上前に出版された書籍のため、当時と現在では経済動向や、株式市場で調子の良い業種等も変わっているため、そのまま使うことはできませんが、さすがヘッジファンドで毎年20%以上のリターンを叩き出してきた凄腕の投資家であり、根底にある銘柄選択術は今も色褪せない内容ですので、参考にしていただければと思います。
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ただし、書籍では、銘柄名を具体的にいくつか挙げているものもあれば、業種や「こんなジャンルの銘柄」と言った形で結構アバウトになっているものもあるので、
1)ジム・クレイマーが銘柄を選択する際のポイント
を説明したうえで、
2)2023年の今の状況で、私だったらこの銘柄を選ぶ
といった順番で、皆さんの参考になるよう、具体的な銘柄も話していければと思います。
なお、私が選ぶ銘柄は、この銘柄は良さそうだなといった感覚に近いもので、参考程度に気楽に読んでいただければありがたいです。
ジム・クレイマーのポートフォリオの作り方
ポートフォリオに組み込むべき銘柄として、ジム・クレイマーが挙げているのが以下の10銘柄です。
- 身の回りにある企業
- 石油株
- 名の通った優良大企業
- 金融関連銘柄
- 「投機」銘柄
- 「お勝手」銘柄
- 大型優良循環銘柄
- ハイテク銘柄
- 新興の流通チェーン銘柄
- 第二のスターバックス
石油や金融、ハイテクは、業種分散を図るという意味でそれほど目新しい視点ではありませんが、「投機」銘柄や、第二のスターバックスなどは、なかなか思いつかない面白い視点ですね。
なお、これらは一度で買わずに、それぞれがバーゲンセールになったタイミングで買うことを勧めています。
身の回りにある企業
まず、最初に選ぶべき銘柄として挙げているのが、「自分の身の回りにある企業」です。
これは、事業や製品の内容について、何も知らないハイテク企業と心中して全てを失うことが無いよう、例えば、最近新しい商品や店舗を積極的に出している、従業員を大幅に増やしているなど、具体的な拡大・成長の感触が得られる銘柄を選ぶべし、というものです。
書籍は米国在住者向けに書かれており、米国のローカルで身近な企業を勧めています。
ただ、日本に住んでいる私たちの場合、米国のローカル企業に関する詳細な情報を取得するには限界があると思うので、実際には、日本にも展開しているグローバル企業で身近にあるものから検討することになると思います。
よく動きが分かるという意味では、私は仕事や日常生活で触れることが多い企業、例えばアップルや、パソコンであればマイクロソフト、スポーツ・アパレルのナイキなどがイメージが湧きます。
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石油株
ジム・クレイマーは、石油株を入れるべき理由として、
- 配当利回りが高く、キャッシュ・フローが潤沢で、景気の悪い時にも好業績を保つところが多い
- 他のどの業種よりも事業がもたらすキャッシュ・フローは高水準で、大規模な自社株買いを行い、増配を続けている
- 多くの業種に見られる循環性を持たず、好業績が持続する。景気の波にかかわらず、石油という希少財は常に底堅い動きをするようだ
と述べています。
実際に、2022年はこの石油株の強さを思い知った年になりました。
私も一時期、パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PXD)を保有していました。
売却益はそれほど取れませんでしたが、当時は配当性向が10%を超え、ポートフォリオの年間配当金の半分以上がPXDからもたらされました。
ここ最近は、原油価格の下落とともに株価も落ち着いてきていますが、中国のリオープニングや欧州での慢性的なエネルギー不足など、今後もこのセクターから目が離せなそうです。
ただ、原油価格に連動する非常にボラティリティの高いセクターなので、原油価格が落ちている時期に買い始めるなど、エントリータイミングに注意したいですね。
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名の通った優良大企業
3つ目が、「名の通った優良企業」で、配当利回りが2.5%より高い銘柄で、この条件を満たすような銘柄で大安売りになっているものから選べばよい、としていますね。
ちなみに、目安となる配当利回り2.5%は、S&P500の平均値なので、これは現在に置き換えると1.6%程度です(S&P500のETFであるVOOの直近の配当利回り)。
このような配当利回りが高い銘柄は、特に相場全体が下がる時の値下がりヘッジになり、株価に関して一種のフロア・バリュー(底値)が形成されるとしています。
確かに、高配当銘柄は、株価が下がるとさらに配当利回りが上がるので、配当目当ての投資家が買いに入り、なかなか値が落ちない印象があります。
ただし、資金繰りがきつくて、借入を増やして増配を賄っているところは、絶対に避けてほしい、と加えています。
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金融関連銘柄
続いてが、「金融関連銘柄」です。
ジム・クレイマーは、過去にアメリカの地方銀行や貯蓄貸付組合に投資して大成功を収めたそうです。
サード・フェデラル・セービングスでは、住宅ローンを申し込んだ際に、頼み込んでもないのに銀行の方から夜自宅に出向いてくるといった、顧客に対するサービスに着目し、投資したところ、2~3年後に高いリターンとかなりの配当が得られたとのことです。
このようにローカルにこだわる理由は、一つ目の「身の回りにある企業」と同じく、銀行の支店に出掛けて繁盛しているか様子を確かめたり、サービスの品質が高いかを確認することができるからだと思われます。
私は今まで金融関連の中でも銀行や証券は、どうも魅力的に映らないため投資した経験が無いのですが、日本からローカルの銀行株を勢いやサービスの視点で探すのは現実的では無いので、メジャーな銘柄から良さそうなものを選ぶ、ということになると思います。
● このカテゴリーに該当する銘柄を分析した記事はこちら
「投機」銘柄
こちらは、意外と思われる方も多いかも知れません、「投機」銘柄です。
ジム・クレイマーは、書籍の中で
投機を否定することはあまりにも禁欲的で、人間の本能に反している。(中略)投機をしたいという気持ちは人間の性なのだ。だから私は、5つ目の銘柄として、リスクは高いが明日のマイクロソフトやホーム・デポに化ける可能性のある銘柄への投機を勧めるのだ。
と述べています。
ただし、一方で注意点として、資金の20%以内にとどめること、投機銘柄は損をしてもかまわない銘柄だと割り切るべきだ、としています。
そこまでリスクを取りたくない人は、この配分を他の銘柄に割り当てても良さそうです。
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「お勝手」銘柄
これはどんな銘柄なのかといえば、お勝手に置いてある商品を売っているような、「地味で変化に乏しい消費財関連銘柄」で、例として、
などを挙げています。いわゆるディフェンシブ銘柄です。
こういったお勝手銘柄は、短期の業績不振が発表されるたびに、大手の機関投資家から失望売りが出て株価が下がるものの、いずれも強いブランド力を持っているから、程なく値が戻るので、人気が離散するタイミングを狙って買えばよい、としています。
ここ最近は、FRBの利上げを嫌ったハイテクからディフェンシブへのローテーションが一巡し、こういったお勝手銘柄の株価は徐々に下がってきているように見えます。
(生活必需品セクターETF、XLPの直近の株価。SBI証券より)
今後も長期的には大きく値崩れするようなセクターでは無さそうなので、仕込むにはちょうど良いタイミングかも知れませんね。
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大型優良循環銘柄
ジム・クレイマーは、景気後退が下降局面に入り、重厚長大産業関連銘柄が大きく売り込まれることがはっきりしたら、以下のような大型優良循環銘柄を組み入れることを勧めています。
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循環銘柄のサイクルに異変?
ジム・クレイマーによれば、循環銘柄は景気後退局面では売り込まれるはずですが、2023年2月時点で、ディアーやキャタピラー、ボーイング等は、これから景気後退が囁かれているにも関わらず、株価は高い水準を維持しています。
これは、2021年11月にアメリカで成立した「インフラ投資・雇用法」によって、10年間で1.2兆ドル規模の予算が投じられるためと考えられています。
そういった意味では、今後もなかなか工業系銘柄の株価は下がらないかも知れませんので、時間分散で少しづつ買い増していくのが無難かも知れません。
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ハイテク銘柄
ハイテク銘柄はリスクが高いとしつつも、「過去20年のうち17年はハイテク銘柄を組み入れないポートフォリオは大きく負けた(※執筆時点)」とジム・クレイマーは指摘しています。
ただし、同時に配当利回りの高い銘柄、すなわち安定成長ステージに到達しているものを選ぶことを勧めています。
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新興の流通チェーン銘柄
私が最も参考になったのが、最後から二つ目の「新興の流通チェーン銘柄」です。
- 地方展開を終わり、これから全国制覇を図ろうとしている銘柄が面白い。(中略)そしていったん全国展開を成し遂げた後は、株価面ではもはや多くを期待できないのだ
- 私が注目するのは、これから成長が加速しそうな段階に差しかかった流通チェーンで、どの地域に進出しても成功するような、独自のビジネスモデルを持ったところだ
- 高成長時代のリミテッド、ギャップ、ウォルマート、コールズ、それにローブやホーム・デポも含まれる。しかし、これらのチェーンが全国展開を終えたと見るや、すぐに手放し、二度と手がけることはなかった
こういった銘柄を日本にいながら探し出すのはなかなか難しいので、成長ステージとしてはもう少し後になってしまうものの、海外展開を始める段階、あるいは実際に進めている段階にある銘柄を検討していくことになるかと考えています。
幸い、アメリカの企業が海外展開をしていく場合、経済や社会的なインフラが強い日本を経由してアジアに展開していくケースも多いので、そういった視点で探していくのも面白いのではないでしょうか。
第二のスターバックス
最後に、第二のアムジェンやスターバックスといった、明日の希望の星になる銘柄をS&P600指数の銘柄から探すことを勧めています。
大型銘柄でないと、言語の問題もあって情報を得るのが難しいので、ここは難易度が高い気ですね。個人的には、一つ前の新興チェーン銘柄と一緒に考えても良いのではないかと思います。
今の状況で、私だったらこの銘柄を選ぶ
それでは、これまで挙げた10銘柄について、今の状況で私だったらどのような銘柄を選ぶか、参考までにご紹介します。
ちなみに、私自身は通常、5~8銘柄ぐらいで回しており、10銘柄保有することはほとんど無いのと、10個の区分のうち同じ銘柄で被ってしまうものがあったため、結果的には9銘柄を紹介したいと思います。
区分 | 銘柄 | 理由・その他 |
---|---|---|
身の回りにある企業 | ディズニー(DIS) | ストリーミング事業の損失が響いているが、日本でのテーマパーク人気は値上げ後も不変 |
石油株 | パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PXD) | 高配当が魅力。エクソンモービルやシェブロンも候補 |
名の通った優良大企業 | ペプシコ(PEPSI) | 時価総額ではコカ・コーラだが、売上規模、長期の成長性でこちらを選択 |
金融関連株 | バンク・オブ・アメリカ(BAC) | ジム・クレイマーのお勧め金融銘柄として、他にWFC、JPM、MSもあるが、なんとなく |
投機銘柄 | パロアルトネットワークス(PANW) | 現時点では最終赤字のためリスク高いが、今後解消見込み。仕事柄、最近見かけるため注目 |
お勝手銘柄 | プロクター・アンド・ギャンブル(PG) | 60年以上の増配。売上・EPSも成長中。株価は一時期より買いやすい水準 |
大型優良循環銘柄 | キャタピラー(CAT) | 業界No.1企業。ただし買うなら少し値下がりを待つ |
ハイテク銘柄 | アップル(AAPL) | iPhoneの売上鈍化が懸念されているが、アップルブランドの強さと今後のサービス収入に期待 |
新興の流通チェーン銘柄 | コストコ(COST) | 日本では定着しつつあるが、世界ベースでは拡大中。年会費モデルで良い商品を安く売る |
第二のスターバックス | ※無し | 小型株の知識が無いのと、期待銘柄としてPANW、COSTがあるため、選出無し |
まとめ
今回は、ポートフォリオの作り方に関するジム・クレイマーのアイディアを紹介しましたが、見ていただいた通り、面白い視点やなるほどなと視点もあったのではないでしょうか。
長期投資はともすれば退屈な作業になりがちですが、こういった選び方で、そこに自分だったら何を当てはめるか、考えてみると新しい銘柄の発見があったり、面白さも出てくると思います。
少しでも長期投資の楽しさが伝われば幸いです。
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※この記事に記載した内容はブログ運営者の個人的な意見やアイディアを述べたものであり、専門的なアドバイスを示すものではありません。特定の銘柄への投資を推奨するものではなく、投資の判断・実行は自己責任でお願いします。