スリーエムって配当高くて興味があるんだけど、そもそもどんな企業?
スリーエムは色々な訴訟を抱えているって聞くけど、業績や株価は大丈夫なのかな?
ここでは、そんな人たちに向けて、産業・消費者向けに様々な製品を展開するコングロマリット、スリーエム(MMM)の事業内容や財務数値を分析していきます。
銘柄を選ぶ際のヒントに少しでもなれば幸いです。
この記事では、スリーエムが長期投資に適しているか、以下の点から分析します。
● スリーエムの事業内容や、競争優位性
● スリーエムのこれまでの業績
● 配当を含むこれまでの投資リターンや株価の考察
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自己紹介
ブログ運営者のYYです。記事をご覧いただきありがとうございます。
米国個別株やインデックスの長期投資を中心に運用しています。会計士の知識を生かした個別株の銘柄分析や、自身の失敗を踏まえた長期投資での気づなど、役立つ情報をブログにまとめていますので、よろしければ他の記事もご覧になってください。
この記事に記載した内容は、私個人ができる範囲で調べた情報を載せ、個人的な意見をまとめたものであるため、参考として、エンタメ的に楽しんでいただければと思います。
こちらの記事をきっかけに興味を持った銘柄があれば深掘りして調べていただき、より理解が深まれば幸いです。
使用した情報・分析手法は、年次報告書に記載されている決算数値や、一般に公表されている情報を用い、シンプルな分析を行っています。正確でない用語や数値が使われているかも知れませんが、ご容赦ください。
四半期の数値は短期の変動やブレが入るため、考慮していません。
紹介した銘柄について、将来の業績や株価についての言及がある可能性がありますが、その業績や株価を保証するものではありません。
また、その銘柄の保有や売買を勧めるものでは無く、売買はご自身で判断ください。
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結論
まず、この銘柄が長期保有に適しているか、これからお話しする内容を踏まえた結論から言うと、
6%の配当利回りは一見魅力的に映るものの、過去の業績や今後の大きな成長につながる材料の乏しさを踏まえると、他の高配当銘柄や資本財の銘柄を選びたい。
(ポイント)
● 業績は拡大しているが、かなりスロー
● 6%と高い配当利回りだが、株価が割安で投資家が敬遠しているために見える
● 投資リターンはS&P500に劣後。成長材料も乏しい
と考えています。
高配当利回りで言えば、マクドナルド、P&G、ジョンソン&ジョンソン辺りを狙いたいです。
また、資本財セクターであれば業績が改善しているキャタピラーを狙います。
あくまでも、私個人の意見である点はご理解ください。
判断の理由や具体的なポイントについては、以降でお話します。
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事業の分析
ここでは、企業情報や事業構成などの事業内容について分析します。
ポイント:
● これまでは、工業製品や消費者向け商品、ヘルスケアなど幅広く展開
● ヘルスケアは売却し、今後は工業系素材・製品に特化
企業情報
業種 | 資本財、コングロマリット |
ティッカー | MMM |
取引市場 | NYSE |
採用指数 | S&P500、NYダウ |
時価総額 | 552億ドル |
決算期 | 12月 |
創業 | 1902年 |
上場 | 1946年 |
本社所在地 | ミネソタ州、セントポール |
CEO | マイク・ローマン |
従業員数 | 92,000人 |
事業内容
スリーエムは、産業向けの素材・工業製品から消費者向けの文房具・オフィス用品、ヘルスケアに至るまで、様々な素材や製品を幅広く展開するコングロマリットです。
① ポストイットは事業のほんの一部、多様な製品展開
スリーエムと聞くと、ポストイットなど文房具を連想する方も多いと思います。
ただ、これはスリーエムが展開する4つの事業セグメントのうち、消費者向けセグメントにある事業の一つ、文房具・オフィス用品事業の一つの製品に過ぎません(文房具・オフィス用品事業の2022年の売上は、スリーエム全体の4%程度)。
売上が最も大きいのは全体の34%を占める工場・作業現場向けのゴーグルや安全装置、研磨剤や接着剤などを製造するセーフティ・産業向けセグメントです。
次いで26%を占める交通事業や広告向けのディスプレイや反射板、セラミックの先端素材を製造する交通・エレクトロニクスセグメントと、ほぼ同規模の医療業界向けにシステムや薬品等を製造するヘルスケアが来ます。
文房具・オフィス用品セグメントは15%と最も小さく、スポンジやブラシなどの家庭用品、DIY用品などが含まれます。
各セグメントに含まれる事業や製品の詳細はこちらを見ていただければと思います。
(2022年の年次報告書、同社のHPから作成)
下のグラフは、各セグメントに含まれる事業の売上割合を示したものです。
(2022年の年次報告書から作成)
② ヘルスケアセグメントのスピンオフを予定
スリーエムは今挙げた4つのセグメントのうち、ヘルスケアについて2023年末までに分社化・売却する予定であることを2022年7月に発表しました。
>>3M Announces Plans to Create Long Term Value Through Spin-Off of Health Care Business
ニュースリリースでマイク・ローマンCEOは、
「ヘルスケア事業の分社化により、十分な資本を備えた世界的に優れた2つの企業が誕生し、それぞれの優先事項を追求するために強力なポジションにある。」
とコメントしています。
ヘルスケアの利益率は悪くは無かったものの、マネジメントとしては工業製品に特化して資本投下していく方針を採ったようです。
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業績の分析
ここではスリーエムの過去の財務諸表から業績を分析していきます。
ポイント:
● 業績は緩やかに拡大
※ことわりが無い限り、以降の数値データは年次報告書(10-K)の情報を使用しています。
業績は緩やかに拡大
2022年までの過去20年間の売上・純利益などの主要な損益指標を見ていきましょう。
売上は少しずつ増えており、20年間で約2倍程度に、営業利益、当期純利益もそれにほぼ比例する形で増えています。
テック系の成長企業に比べるとかなり地味な成長率ですね。
また、資本財セクターの中でも、例えば建設機械を製造するキャタピラーは、20年間で売上は3倍に増えています。
事業売却などが影響しているためか、資本財セクターの中でも成長は遅い方かも知れません。
① 利益率は一定水準を推移しているが直近は低下傾向
次に、過去20年間の利益率(下の3指標)を見てみます。
- 粗利益率:(売上-売上原価)÷売上
- 営業利益率:営業利益(売上利益 ー 販管費)÷ 売上
- 売上純利益率:当期純利益 ÷ 売上
他社との競争による値下げやコスト増加など、競争優位性に大きな問題が生じていれば、利益率にも変化が出てくると考えられます。
長期的には一定水準を保っておりそれほど問題無さそうですが、2021年から利益率が落ち込み気味なのが気になります。
セグメント別に見てみましょう。
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利益率の低下は訴訟関連の費用が主因
セグメント別に見ると、全セグメントとも利益率が落ちていますが、その原因は主にセーフティ・産業向けと交通・エレクトロニクスにあります。
2022年の年次報告書によれば、セーフティ・産業向けの利益率低下は、材料や物流コストの増加の他、軍人向けの戦闘用耳栓に関連する訴訟費用を計上したためのようです。
また、交通・エレクトロニクスについては、同様に材料や物流コストの他、水質汚染問題につながったPFAS製造の撤退費用が影響しています。
② 1株当たり純利益は20年間で約3倍
下のグラフは当期純利益と1株当たり当期純利益(EPS)の推移を示したものです。
EPSは20年間で約3倍の水準になっています。
安定して伸びてはいますが、伸び率はやはり物足りないですね。
なお、キャタピラーは同期間で約8倍になっています。
2003年:3.02ドル → 2022年:10.18ドル
投資リターン・株価の分析
最後に、投資リターンについて整理します。
ポイント:
● リターンはセクター平均、S&P500指数から劣後
● 6%の配当利回りは高いが、投資家が離れて株価が安くなったことが要因か
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S&P500、セクター平均から大きく劣後
ここでは、直近の年度決算月である2022年12月までの配当込みの投資リターン(チャートは月足)をS&P500指数などと比較します。
スリーエムのリターンは、長期の20年、10年、中期の5年、いずれの投資期間をとってもS&P500とセクター平均を大きく下回っています。
特に2022年までの5年間は配当込みのリターンがマイナスになってしまっています。
銘柄・指数 | 5年 | 10年 | 20年 |
---|---|---|---|
スリーエム | ▲46% | +37% | +216% |
資本財セクター指数(XLI) | +40% | +207% | +671% |
S&P500 | +44% | +172% | +375% |
【投資期間5年】
(Trading Viewより)
【投資期間10年】
(Trading Viewより)
【投資期間20年】
(Trading Viewより)
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配当利回りは高いが危険水準に近いか
2023年7月時点での予想配当利回りは約6%です。
数値だけを見れば魅力的に映るかも知れませんが、配当が高いというより、それだけ株価が割安になっている、つまりは大きな問題を抱えている銘柄と投資家が捉えているとも理解できます。
下のグラフは、過去20年間の1株当たり当期純利益(EPS)と1株当たり配当の推移を示したものです。
2019年頃から利益の伸びが鈍化し始め、配当も伸びなくなっています。
現在の株価と今後の見通し
2023年7月現在の予想PER(2023年の予想EPSに基づく)は約11倍です。
同社のPERがこれまで15~20倍辺りを推移していたことを踏まえると、かなり割安といえます。
ただ、将来性が高い事業の成長など、株価成長につながるような明るい材料が現時点では見当たらず、私だったら株価成長を狙いたいので買うのはためらいます。
日本の有名な長期投資ファンドは過去に売却
農林中金パートナーズが運営する、「構造的に強靭な企業®」を厳選して長期投資することで有名なおおぶねファンドは、過去にスリーエムを保有していましたが、2022年3月に全株売却したことを発表しました。
その理由について、ファンドの運用報告書では、主な収益源となっているアメリカは経済が成熟しつつあり、このような経済圏ではモノや製品の機能よりも、デザインや情報に価値が置かれる「Dematerialization」が進むことが挙げられています。
こうした中で、スリーエムの製品の多くが素材、生産財、消費財などであり、ソフトウェアやサービスといったDematerializationと親和性の高い収益源に乏しいことを、売却の理由として指摘しています。
他の記事でも挙げているとおり、私は長期投資の銘柄を検討する上でおおぶねファンドの保有銘柄をかなり参考にしています。
スリーエムの話も含め、この仮説が必ずしも当たるわけではありませんが、投資のプロである機関投資家がどう見ているかは、投資の検討で参考にしておいた方がいいと考えています。
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まとめ
ここまで、スリーエムの事業内容、業績、投資リターンと、今後の見込みについて見てきました。
総合すると、6%の配当利回りは一見魅力的に映るものの、過去の業績や今後の大きな成長につながる材料の乏しさを踏まえると、他の高配当銘柄や資本財の銘柄を選びたいと考えています。
このような銘柄分析のほか、銘柄の選び方や投資の勉強方法など、投資を始めたばかりの方に向けて有益な情報をまとめています。
ぜひご覧ください。
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※この記事に記載した内容はブログ運営者の個人的な意見やアイディアを述べたものであり、専門的なアドバイスを示すものではありません。特定の銘柄への投資を推奨するものではなく、投資の判断・実行は自己責任でお願いします。