ここでは、米国の株式指数に組み込まれている有名・大型銘柄や、投資家の間で注目を浴びている銘柄について、長期保有に適しているか財務分析をしていきます。
株価が大きく動いている今の環境下で、良い銘柄を安くなったタイミングで拾いたいという方へ、銘柄選びの参考になれば幸いです。
今回は、世界的な製薬企業である、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)です。
この記事を読むことで、
● ジョンソン・エンド・ジョンソンは長期保有に適しているか(他に有望な銘柄は無いか)
● その際、気を付けるべきポイントは何か
が分かるようになります。その他の銘柄についてはこちらから
自己紹介
ブログ運営者のYYです。記事をご覧いただきありがとうございます。
米国個別株やインデックスの長期投資を中心に運用しています。会計士の知識を生かした個別株の銘柄分析や、自身の失敗を踏まえた長期投資での気づなど、役立つ情報をブログにまとめていますので、よろしければ他の記事もご覧になってください。
この記事に記載した内容は、私個人ができる範囲で調べた情報を載せ、個人的な意見をまとめたものであるため、参考として、エンタメ的に楽しんでいただければと思います。
こちらの記事をきっかけに興味を持った銘柄があれば深掘りして調べていただき、より理解が深まれば幸いです。
使用した情報・分析手法は、年次報告書に記載されている決算数値や、一般に公表されている情報を用い、シンプルな分析を行っています。正確でない用語や数値が使われているかも知れませんが、ご容赦ください。
四半期の数値は短期の変動やブレが入るため、考慮していません。
紹介した銘柄について、将来の業績や株価についての言及がある可能性がありますが、その業績や株価を保証するものではありません。
また、その銘柄の保有や売買を勧めるものでは無く、売買はご自身で判断ください。
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結論
まず、この銘柄が長期保有に適しているか(他に有望な銘柄は無いか)結論から言うと、
安定成長と高配当の両方を狙えるポートフォリオの主力になる銘柄
(ポイント)
● 米国最大のヘルスケアで収益基盤は安定
● 60年の連続増配、配当利回りも3%近い水準
● コンシューマー・ヘルス部門の分離が業績・配当に与える影響は注視
と考えています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの企業、事業概要
企業情報は以下のとおりです。
企業情報
業種 | Healthcare, Drug Manufacturers—General |
ティッカー | JNJ |
取引市場 | NYSE(ニューヨーク証券取引所) |
設立 | 1887年 |
上場 | 1944年 |
本社所在地 | ニューブランズウィック、ニュージャージー州 |
CEO | Joaquin Duato |
従業員数 | 141,700人 |
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、1887年に設立された、時価総額では米国最大の製薬会社です。
米国経済を代表する30銘柄で構成されるニューヨークダウ株式指数に1997年から選ばれています。
60年以上連続で増配している高配当銘柄としても有名です。ただ、株価も上昇しているため、2023年1月現在の株価利回りは2.6%程度です。
事業内容
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、以下の3つの事業部門から構成されています。
① 3つの事業部門を所有
最も大きいのが医療用医薬品(Pharmaceutical)部門で、2021年の売上ベースで全体の約55%を占めています。次に大きいのが医療機器(Medical Devices)部門で約29%、最も小さいコンシューマー・ヘルス部門は約16%を占めます。
日本では同社のバンドエイドやスキンケア用品が有名ですが、これらは全てコンシューマー・ヘルス部門に属します。医薬品や医療機器の方が売上規模が大きいのは意外ですね。
② コンシューマー・ヘルス部門は2023年中に分離
ジョンソン・エンド・ジョンソンは2023年11月までにコンシューマー・ヘルス部門を新会社として分離する予定です。
新会社は「Kenvue」という名称でニューヨーク証券取引所に上場し、残った2部門を持つジョンソン・エンド・ジョンソンが新会社の80.1%を保有するようです。
この分離について、ジョンソン・エンド・ジョンソンCEOのJoaquin Duatoは、2023年1月9日に行われたJPモルガン・ヘルスケア・カンファレンスの中で、
「ジョンソン・エンド・ジョンソンにとって最大のチャンスは、医療機器と医薬品により特化した企業を作ることだ。3つのセクターから2つのセクターに移行するのには利点があり、よりシンプルな企業になる。よりシンプルになると、機敏で、速く、より競争力が高まる」
とコメントしています。
なお、この分離は、機関投資家の間ではそれほどサプライズではなく、アナリスト界隈では数年前から話題に挙がっていたようです。
米国の投資家ジム・クレイマーはこの分離について企業価値を上げるディールだと好感しています。
>>より詳細はCNBC記事へ
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事業の競争優位性
利益率が高い場合、一般的には競争優位性が高いと考えられることから、米国製薬大手と比べてみましょう。なお、ジョンソン・エンド・ジョンソンは一般向けのコンシューマー・ヘルス部門を有しており他社とは利益構造が異なる可能性がありますが、ここでは簡易的に比較します。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは売上成長率こそ大手6社の中でも低い方ですが、業界最大手であることを踏まえれば成長スピードの遅さは仕方のないところでしょう。
一方で税引前利益率(税引前当期純利益/売上)は業界トップクラスであり、競争優位性を持っていることがうかがえます。
財務分析
財務分析のポイントを整理しておきます。
分析のポイント
5~10年の長期的なスパンでの保有を考えた場合、企業の事業が安定的に成長していくとともに、強固な財務体質や事業を拡大するためのキャッシュフローを生み出す構造を持っている必要があります。
このような観点を踏まえると、長期投資を検討する際、決算数値が以下のポイントをクリアしているか確認する必要があると考えています。
- 事業の成長性:
事業が毎期着実に成長しているか。例えば、景気サイクル等のマクロ環境の影響を受けて大きく売り上げが落ちていないか。 - 収益の安定性:
収益が安定的に発生しているか。例えば、売上の成長以上に売上コストや営業費等が増加し、最終利益が出ないような構造になっていないか。 - 財務・キャッシュ・フローの健全性:
・借入が業界平均などと比べて極端に多くないか。
・営業活動から現金流入が生じ、事業への成長投資、配当や
自社株買いなどの株主還元に割り当てられているか
(本業から現金流入が無いのに、配当を支払うなど、キャッシュ
フローの健全性を損ねていないか)
この3つのポイントから分析していきましょう。
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事業の成長性
※ことわりが無い限り、これ以降の数値に関するデータは10-Kの情報を使用しています。また、記事作成時点では2022年のデータが公表されていないため、2021年までのデータを使用しています。
① 売上、純利益は着実に成長
まず、過去20年間の売上推移を見ると、テクノロジー株のような急激な増加ではありませんが、着実に右肩上がりで推移しています。部門別の内訳で見ると、ここ10年位は医薬品部門が大きく成長していますが、コンシューマー・ヘルス、医療機器部門はほぼ横ばいですね。
コンシューマー・ヘルス部門の伸び悩みが、先ほど述べた分離の理由の一つと言えるかも知れません。
純利益とEPS(一株当たり純利益)は、売上ほど綺麗ではありませんが、2017年を除き、ともに概ね右肩上がりで推移しています。直近の2021年度は20年前の2001年からは純利益、EPS両方とも約4倍、10年前の2011年からは約2倍程度に増えています。
なお、2017年に大きく落ち込んでいるのは、その年に米国で成立した減税・雇用法(いわゆる「トランプ減税」)により、国外のグループ会社に留保する利益剰余金に対しても課税されることとなり、税金費用が一時的に大きく増加したためです。
② 株価は直近ではS&P500指数をアンダーパフォーム
直近10年間の株価はS&P500指数を下回っています。
一方で、ヘルスケアは不況時でも需要に大きな変化がないことから景気後退に強いといわれ、株価はS&P500指数ほど10年間で大きな変動は無く、安定成長しているといえます。
(SBI証券の株価情報より。10年前の2013年3月の株価を100とした場合の推移。2023年3月28日時点)
③ 今後の成長見込み
世界的な人口の増加や、アメリカ、日本などの先進国での高齢者割合の上昇を考慮すると、世界的に活動するヘルスケア企業であるジョンソン・エンド・ジョンソンは、今後も安定した成長が見込まれます。
④ 連続増配銘柄としても有名。コンシューマー・ヘルスの分離がどう影響するか
同社は連続増配銘柄としても有名で、2022年時点で、なんと60年連続で増配しています。
また、2023年3月時点での予想配当利回りは2.9%あり、割と高めです。
それだけの配当を出す余力があるビジネスと収益構造を持っていることの現れともいえます。
ただし、後ほど部門別の利益率が出てきますが、利益率が安定しているコンシューマー・ヘルス部門の分離が、今後この配当政策にどう影響するか留意が必要です。
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収益の安定性
ここでは、以下の2つの収益指標を見ていきます。
- 粗利益率:売上粗利益(売上-売上原価)÷売上
- 営業利益率:営業利益(売上利益 ー 販管費)÷ 売上
- 売上純利益率:当期純利益 ÷ 売上
これらはいずれも、売上からどの程度の割合の利益を生み出せているかを測る指標で、高いほど経営効率が高いこと、つまり効率よく利益を出していることを示します。
利益率は3指数とも安定して推移しています(売上純利益率が2017年に落ち込んでいるのは、前述の一時的な税金費用の増加による)。
部門別の利益率も見てみましょう。部門別の業績は税引前当期純利益のみ開示されているため、その売上に対する割合(税引前利益率)を記載します。
コンシューマー・ヘルス部門の利益率は若干ですが低下傾向にあり、医薬品が30%、医療機器が20~25%付近を推移しているのと比べても低いですね。
この点も、コンシューマー・ヘルス部門の分離で経営効率を上げる目的があるように思います。
財務・キャッシュフローの健全性
ここでは、負債を中心とした財務面と、本業に関わる資金流入・流出のキャッシュフロー面の健全性を確認します。
① 財務面
同社の2021年12月末時点での長期借入金は299億ドルであり、純資産740億ドルと比較して高くない水準です。また、2021年の純利益が208億ドル、営業キャッシュフローが234億であることを考慮すると、数年で支払可能な水準であり、財務的な問題は大きくないと考えられます。
② キャッシュフロー面
下の図は、各年で本業からの資金流入を示す営業キャッシュフローを左側に、その使途として事業成長に必要な資本的支出や株主への還元である配当金、自社株買い(一株当たり純利益の増加で株主利益に貢献)の資金流出を右側に並べたグラフです。
営業キャッシュ・フローが設備投資や事業拡大(資本的支出)だけでなく、株主還元としての配当、自社株買いにもバランスよく充当されています。
なお、2006年にファイザーのコンシューマー・ヘルスケア事業を160億ドルで、2017年にスイスの製薬会社アクテリオンを約300億ドルで買収しています。
両買収ともほぼ借入に頼らずキャッシュで行われており、改めてジョンソン・エンド・ジョンソンの事業の強さを感じます。
まとめ
以上を踏まえると、ジョンソン・エンド・ジョンソンの業績は着実に成長しており、配当も狙える銘柄です。
株価もS&P500と異なり大きな上下動が無いことから、ポートフォリオに分散を効かせる目的で、また、株価変動のストレスにあまり晒されたくない人にとっては、ポートフォリオの主力になりうる銘柄だと個人的には考えています。
その他にも、投資を始めたばかりの方に向けて有益な情報をまとめています。
ぜひご覧ください。
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