米国のシリコンバレー銀行を始めとする一連の破綻・信用不安を受け、ここ最近の米国株市場に大きな動揺が走っています。
私が投資する際の目安にしている、投資家の強気・弱気を示すCNNのFear and Greed Indexも、「極端な強気」からわずか1か月で「Extream Fear(極端な弱気)」に入り、個人投資家が市場に振り回されている状況です。
(2023.3.14時点。ソース:CNN)
S&P500指数は月初来だとそれほどの落ち込みでは無いものの、個別株や積立目的のインデックス投信について暴落する前に売却したほうがいいのか、SNSなどでもちょっとした騒ぎになっています。
そこで、今回の記事では、特にS&P500や全米株式、あるいは全世界株式など、一般的に長期での資産形成を目的に積み立てている
投資信託は暴落時に売るべきか売却タイミングはいつか
について、私の実体験などを踏まえて解説したいと思います。
是非、最後まで読んでいただければありがたいです。
簡単な自己紹介
ブログ運営者のYYです。記事をご覧いただきありがとうございます。
米国個別株やインデックスの長期投資を中心に運用しています。会計士の知識を生かした個別株の銘柄分析や、自身の失敗を踏まえた長期投資での気づなど、役立つ情報をブログにまとめていますので、よろしければ他の記事もご覧になってください。
● 私の投資スタイルと運用額について↓
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結論
まず、結論からお伝えすると、以下のとおりです。
(結論)暴落で安易に売るべきではない
(理由)
① 先人の教え(判断を誤る可能性をわざわざ増やすな)と、私の経験則
② 投資信託は長く保有するほど勝つ確率が高まる
(例外)自分のリスク許容度を超えている場合、一部売却や積立を減らすのはあり
私はこのように、暴落や、ましてや暴落が来そうだという世間のニュースや噂で安易に売るべきではないと考えています。
以下では、その理由と、とはいえ精神的に辛い場合の例外について解説します。
先人の教えと私の経験則
ここでは、米国の著名投資家の一人であるハワード・マークスの長期投資における売却に関する考えと、私の経験則についてお話しします。
ハワード・マークスの売却に関する考え
まず、ハワード・マークスが誰かというと、世界最大級の資産運用会社オーク・ツリーキャピタルの創業者兼会長であり、あの投資の神様ウォーレン・バフェットも一目置いている、米国の著名投資家の一人です。
彼は、自身の長年のキャリアを踏まえた長期投資の売却タイミングに関する考察をメモとして公表しています。
● ハワード・マークスが考える長期投資の売却タイミングについて、詳細が知りたい方はこちら↓
今回は、その中から特に関連する内容をいくつかピックアップしていきます。
① 判断を誤る可能性をわざわざ増やすべきではない
ハワード・マークスは、長期投資においては、投資対象が長期的な成長可能性を持つ限り、短期の価格変動で売却すべきではないと述べています。
でも、こんな声も聞こえてきそうですね。
銀行の破綻や取り付け騒ぎ、景気後退も来ると言われてるし、短期的に価格が下がりそう。下がることを見越していったん売却して、下がったところで買い直せばいいんじゃないの?
これにに対するハワード・マークスの意見をまとめると、こうです。
暴落が起こる前に売って、価格が下がり切ったところで買う、その適切なタイミングを見極めることは、ほとんどの投資家にはできない。
それならば、売ってまた買い戻す、という判断を誤る可能性がある2つの行動を取るべきではない。
長期的な成長が見込まれる投資対象であれば、投資の継続こそが最もミスが少ない投資方法だ。
私もこの意見には同意で、よく過去のチャートを見て、「この天井で売って、この底で買い戻せば簡単に利益が取れるだろうな」と思ってしまいがちですが、実際にその場に居合わせたら、そんな見極めは少なくとも私にはできません。
② 成長可能性が見えなくなったら売る
では、長期投資で資産を買ったらいつ売るのか、「その資産の成長可能性が見えなくなったら売る」とハワード・マークスは答えています。
インデックス型の投資信託の場合、その投資対象となっている企業群の長期的な成長が見込めなくなった時ということになります。
S&P500で言えば、短期的な予想EPSは切り下がりつつあるものの、これまでの長期的な米国市場の成長を踏まえると、私はその条件には当てはまらないように思います。
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コロナ禍でもS&P500インデックス積立は継続
ここでは、私の実体験をお話します。
運用額に関する記事でも紹介している通り、私はS&P500指数に連動する投資信託を数年前から保有しています。
コロナ禍でアメリカを含む世界中の経済活動がストップし、保有していた投資信託も2020年に最大で30%近く下落しました。
ですが、私はいずれ回復するだろうと積立を継続し、結果的に現在では大きくプラスになっています。
とはいえ、その当時は、コロナがあれほど長期にわたって各国の経済を苦しめることになるとは想像もしていませんでしたし、正直なところ、仕事が忙しくてそれほど念入りに調べる時間もありませんでした。
今思えば楽観的過ぎたとも思いますが、むしろ毎月積立している投資信託は、あまり神経質にならず、ほったらかしにしておくぐらいがちょうど良いような気もします。
① 今回の動揺や、世間で予想されている景気後退でも売る気は無い
幸運な面もありましたが、下落中も保有し続けた経験を踏まえて、2023年3月現在も、銀行破綻やこれらを引き金とした金融危機などが騒がれていますが、私は売る気はありません。
むしろ安いなと思ったタイミングで、個別株を中心に余剰資金を少しづつ投入しています。
そうは言っても、私も自分の資産の価格が下がるのは怖いです。
投資を始めたばかりの方は、同じ気持ちなんだと安心してもらえればと思います。
② 周りに流されず、冷静に判断する
2020年当時は、コロナによる経済活動の停滞を阻止するために政府が補助金をバラまいたり、FRBが金融緩和政策を採っていたのに対し、現在はインフレ退治のために引き締めで景気を冷やしている最中であり環境が全く異なるため、以前の考え方が100%通じるとは言えません。
ただ、巷ではリーマンショックの再来などと暴落論がまた盛り上がってきていますが、本当に暴落が来るかは誰にも分かりません。
サイコロジー・オブ・マネー(著:モーガン・ハウセル)にも「悲観論はもっともらしく聞こえる」とありますが、人間は、本来ネガティブなバイアスがかかりやすい特性を持っています。
また、人間は自分にとって都合の良い(自分の行動を正当化しやすい)情報を無意識に集めてしまう性質を持っています。
改めて、自分がそのような状況に陥っていないか、偏った情報だけでなく、反対の意見やその理由も含めてよく吟味したうえで、自分にとってベストな選択を冷静に考えられるかが、別れ道になるのは間違いないと考えています。
統計的に長く保有するほど勝つ確率が高まる
先ほどの結論の部分で、コロナ禍でも投資信託の保有を継続することでプラスになったと経験値でお伝えしました。
ただ、それでも「それはたまたまラッキーだっただけでしょ」とか「精神論だけじゃ納得できない」と言われそうなので、理論的にも投資を継続することが勝ちやすいことを説明します。
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長期になるほどリスクに対するリターンは高まる
※このパートは『攻めと守りの資産形成(著:井出 真吾、日本経済新聞出版)』を参考に書いています。
一般的に、投資はリスクとリターンの関係で評価します。
例えば、国債などの債券はローリスク・ローリターンである一方、株式はハイリスク・ハイリターンといったように、ハイリターンを得るにはそれなりのリスクを取らなければなりません。
そして、この関係を時間軸で見た場合、
投資期間が長期になるほど、リスクに対するリターンの割合が高くなる
つまり、長期になるほど勝つ可能性が高まる
のです。
ここからは、具体的にリスクの性質と、リターンとの関係を数字ベースで確認していきますが、ちょっと数学が苦手だという方は、上の関係だけ理解いただければ問題ありません。
リスクの定義と性質
ここで改めてリスクについて定義すると、一般的にリスクは「投資のリターンが変動する確率」を言います。
変動する可能性なので、損する場合だけではなく得する場合も含まれます。
i. リスクは「標準偏差」で示される
また、投資の世界では、標準偏差(統計学におけるリターンのバラつきを示す指標。)を使ってリスクを数値化します。
例えば、投資信託の人気商品の一つである「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の標準偏差は過去1年では概ね20であり、「1年間でリターンの変動が20%以内に収まる可能性が高い※」ことを示しています。
※厳密には、過去1年間のデータによれば、68%の確率でリターンが20%以内に収まっていることを示す。
(SBI証券ホームページより)
仮にこの商品のリターンが年率8%の場合、リターンは28%から-12%に収まる可能性が高い、ということになります。
ii. 投資期間が長くなるほど、リスクは変動幅の増加が小さくなる
また、リスクは投資期間が長くなるほど、変動幅の増加が小さくなり、具体的には、投資期間の平方根に比例する性質を持っています。
例えば、投資期間2年目の場合、√2=1.414…なので、リスクは20%×1.414…で約28%となります。
投資期間10年までのリスクを計算すると、以下のとおりです。
対するリターンは複利効果により年を追うごとに高くなっていく
これに対してリターンは仮に年率8%の場合、複利効果により2年後は17%、3年後は26%と複利的に増えていきます。
リターンが年率8%、リスクが年率20%の投資信託に100万円投資した場合の20年後までの資産額の推移をグラフで表すと、以下のようになります。
真ん中の青いグラフがリスクを加味しない場合の資産推移を、オレンジとグレーのグラフがそれぞれリスクを加味して上下にリターンが変動した場合の資産推移を示しています。
つまり、この例では、20年後には資産額が377万円から556万円の間(縦線の部分)に収まる可能性が高いことを示しています。
ここで着目してほしいのは、右に行くほど縦線の部分が上に移動していくこと、つまり、運用期間が長いほどリターンがプラスになる可能性が上がるということです。
この傾向は、リターンやリスクが変わっても同じです。
もちろん、統計的にこうなる可能性が高いということでしかなく、必ずしもこうなると言えませんが、理論的に考えた場合、長期で保有し続けた方が勝ちやすいことは分かっていただけたと思います。
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売却を検討した方が良いケース
ここまで、長期投資を継続すべき理由についてお話してきました。
とはいえ、個人的には例外があると考えており、それが「自分のリスク許容度を超えてしまっている場合」です。
自分のリスク許容度を超えている場合
例えば、生活資金をギリギリにして余剰資金を全て投資している場合は、どうしても日々の資産価格の変動が気になってしまい、価格が下がると、焦ったり不安を感じたりしますよね。
また、そうでなくとも、今のような不確実な状況で、「投資が気になってしまって本業の仕事に身が入らない」「ストレスで眠れない」など、精神的な問題に発展している場合は、リスク許容度を大きく超えてしまっていると考えられます。
このような場合は、
投資で生活を豊かにする本来の目的と本末転倒になってしまうため、理論的には投資を継続すべきであっても、売却を検討すべき
だと個人的には思います。
一部売却、積立額を減らすなどの段階的な対応が望ましい
ただし、そのような場合であっても、一部を売却したり、積立額を減らすことで、手元の余裕資金ができると、意外と精神的に通常運転に戻ったりすることもあります。
例えば、とりあえず投資信託のうち1/3だけ売る、或いは毎月5万円積み立てていたのを3万円にするなどで様子を見てみるのもありだと思います。
そういった意味で、
投資は常に余裕資金を残しておいた方が精神的にも安定する
と思います。
マーケットの上昇を取り損ねる可能性はありますが、逆にマーケットが下がった時には大きく買い増せる可能性がありますし、特に投資を始めたばかりの方は、無理し過ぎないことをおすすめします。
このようなメンタルの重要性を非常に分かりやすく、初心者向けに書いている書籍がありますので、興味があれば是非どうぞ。
株だけでなく、投資信託も含めた投資家に役立つ内容です。
著者 | 上岡 正明 |
出版社 | 東洋経済 |
初版発行 | 2022年9月 |
定価(本体) | 1,400円 |
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まとめ
今回は、投資信託の売却タイミングについてお話しました。
私は、これから暴落が来そうだから売るというのは反対ですが、精神的に続けることが難しいことも出てくると思います。
病んだりしてしまっては正常な判断ができなくなり、そもそも最も大事な、投資を楽しむことから大きく逸れてしまうため、そのような場合は、一部売却などメンタルの健康を優先して考えると良いと思います。
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※この記事に記載した内容はブログ運営者の個人的な意見やアイディアを述べたものであり、専門的なアドバイスを示すものではありません。特定の銘柄への投資を推奨するものではなく、投資の判断・実行は自己責任でお願いします。