米国の個別株に挑戦してみたいけど、どれを選んだらいいか分からない。
人気の銘柄や専門家、インフルエンサーのおすすめ銘柄を買ってみたいけど、もうちょっと中身が分からないと不安。。。
ここでは、そんな人たちに向けて、投資家の間で人気の銘柄や注目を浴びている銘柄について、主に長期的な保有に適しているか、事業内容の解説も加えながら、過去10年以上の財務数値を分析していきます。
銘柄を選ぶ際のヒントに少しでもなれば幸いです。
今回は、米国を代表する投資銀行の一つ、ゴールドマン・サックス(GS)です。
この記事を読むことで、
● ゴールドマン・サックスは長期投資に適しているか(他に有望な銘柄は無いか)
● その際、気を付けるべきポイントは何か
が分かるようになります。その他の銘柄についてはこちらから
自己紹介
ブログ運営者のYYです。記事をご覧いただきありがとうございます。
米国個別株やインデックスの長期投資を中心に運用しています。会計士の知識を生かした個別株の銘柄分析や、自身の失敗を踏まえた長期投資での気づなど、役立つ情報をブログにまとめていますので、よろしければ他の記事もご覧になってください。
この記事に記載した内容は、私個人ができる範囲で調べた情報を載せ、個人的な意見をまとめたものであるため、参考として、エンタメ的に楽しんでいただければと思います。
こちらの記事をきっかけに興味を持った銘柄があれば深掘りして調べていただき、より理解が深まれば幸いです。
使用した情報・分析手法は、年次報告書に記載されている決算数値や、一般に公表されている情報を用い、シンプルな分析を行っています。正確でない用語や数値が使われているかも知れませんが、ご容赦ください。
四半期の数値は短期の変動やブレが入るため、考慮していません。
紹介した銘柄について、将来の業績や株価についての言及がある可能性がありますが、その業績や株価を保証するものではありません。
また、その銘柄の保有や売買を勧めるものでは無く、売買はご自身で判断ください。
● 長期保有に適した銘柄の選び方
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結論
まず、この銘柄が長期保有に適しているか、結論から言うと、
市場環境に特に左右されやすいビジネスモデルで、安定した金融株を買いたいなら商業銀行グループに注目
(ポイント)
● 投資銀行業務とトレーディングなど市況に左右される事業の割合が多い
● 特に2022年はFRBの利上げ等の影響を受け、純利益は前年から半減
● 安定した手堅い金融株を選ぶなら、JPモルガンなど商業銀行グループ
と考えています。
判断の理由や具体的なポイントについては、「財務分析」でお話します。
なお、商業銀行グループでは米国最大規模のJPモルガンについては、下の記事で分析しています。
銘柄情報
企業情報や事業内容について、簡単に触れておきます。
企業情報
業種 | 金融、キャピタルマーケット |
ティッカー | GS |
取引市場 | NYSE(ニューヨーク証券取引所) |
設立 | 1869年 |
上場 | 1999年 |
本社所在地 | ニューヨーク州、ニューヨーク |
CEO | デイビッド・ソロモン |
従業員数 | 48,500人 |
事業内容
ゴールドマン・サックスは、グローバルに投資銀行やマーケットメイク(※)、富裕層を中心とした資産運用管理を中心に展開する金融サービスグループです。
※取引量の少ない資産の市場流動性を確保するために、取引所から指定された者(主に機関投資家)がその資産を大量に売買し、公平な価格での売買を成立させる取引
① モルガン・スタンレーと投資銀行トップを争う規模
投資銀行グループでは、ゴールドマン・サックスはモルガン・スタンレーと1位・2位を争う規模を誇ります。
(各社の年次報告書、yahoo!financeより)
② 投資銀行業務、マーケットメイキング、資産管理が事業の柱
投資銀行らしく、M&Aアドバイザリーや株式・債券の引受を行う投資銀行業務やマーケットメイキング、資産管理が事業の柱となっています。
主要なセグメントは投資銀行とマーケットメイキングを含む「銀行・マーケット」と「資産管理」です。
(同社の2022年年次報告書より)
下のグラフは2022年の営業収益を源泉別にまとめたものです。
他社との中核事業の違いが分かるように、左側にゴールドマン・サックス、右側にライバルのモルガン・スタンレーを示しています。
大きく異なるのは、ゴールドマン・サックスではマーケットメイキング(MSにおけるトレーディングに相当)が最も大きい約4割を占めているのに対し、モルガン・スタンレーでは資産管理業務が最も大きい点です。
資産管理収入は顧客から委託された資産の管理手数料・報酬から構成されるため、これが大きいモルガン・スタンレーの方が、金融市場が不安定な状況では業績が安定しやすいと考えられます。
(各社の2022年年次報告書より)
財務分析
ここからはゴールドマン・サックスの過去の決算数値を見ながら分析していきます。
先に分析のポイントを整理しておきます。
分析のポイント
5~10年の長期的なスパンでの保有を考えた場合、企業の事業が安定的に成長していくとともに、強固な財務体質を持っている必要があります。
このような観点を踏まえると、長期投資を検討する際、決算数値が以下のポイントをクリアしているか確認する必要があると考えています。
- 事業の成長性:
事業が毎期着実に成長しているか。例えば、景気サイクル等のマクロ環境の影響を受けて大きく売り上げが落ちていないか。 - 収益の安定性:
収益が安定的に発生しているか。例えば、売上の成長以上に売上コストや営業費等が増加し、最終利益が出ないような構造になっていないか。 - 財務の健全性:
・銀行の場合、財務健全性指標に問題が無いか。
この3つのポイントから分析していきましょう。
事業の成長性
ここでは、過去の売上やEPS、株価の推移から、今後の成長性を分析していきます。
※ことわりが無い限り、これ以降の数値データは年次報告書(10-K)の情報を使用しています。
① 金融危機を経て、営業収益は徐々に回復しているが。。。
過去20年間における営業収益の推移を見てみましょう。
2008年の金融危機で株式・債券・コモディティなどを含む保有資産の価格下落により、自己勘定取引が大きく落ち込みマイナスとなっています。
ボルカー・ルール制定による主要事業の制限
アメリカでは、この金融危機における銀行破綻を教訓として、顧客からの預入資産を保護するため、銀行の自己勘定(自己資金)を利用したリスクの高い取引を制限する、ボルカー・ルールが2010年から適用されています。
これにより、銀行は自己勘定でのデリバティブやコモディティのトレーディング取引や、ヘッジファンド投資が大幅に制限されることとなり、これらが事業の中心となっていたゴールドマン・サックスの収益は、2010年以降大きく落ち込みました。
その後は、市況変動の影響を受けにくい投資銀行部門や富裕層を中心とした資産管理部門の事業拡大を図ることで、徐々に収益が伸びています。
結果として、2022年の収益は20年前から約3倍に増加しています。
② 純利益も順調に増加
純利益、EPSも過去20年間で営業収益と概ね同様の動きを見せています。
純利益:2002年 21億ドル → 2022年 107億ドル(約5倍)
EPS(一株当たり純利益):2002年 4.03ドル → 2022年 30.06ドル(約7倍)
③ 市場環境に左右されやすい事業体質
ここまで述べたとおり、長期的には事業は拡大傾向にあります。
ただし、直近の業績を見ると、2022年はFRBによる急速な利上げや金融市場の混乱を受け、IPOなどの株式引受業務や未公開企業を中心とした投資の運用益が縮小しています。
結果として、2022年は前年比で収益は▲20%、純利益は▲49%と大きく落ち込んでおり、依然として市場環境に左右されやすい事業体質にあります。
ライバルのモルガン・スタンレーの方が上手く事業転換を図っている
モルガン・スタンレーの2022年の前年比を見ると、事業内容で触れた通り資産管理業務に重点を置いているため、純利益は▲30%程度でマイナスではあるもののゴールドマン・サックスよりも落ち込みは緩やかです。
この点、アメリカの著名投資家ジム・クレイマーは、「モルガン・スタンレーは資産管理などの手数料ビジネスに上手く舵を切れている」として、同社を推しています。
ゴールドマン・サックスは、市場環境次第では爆発的な業績が見込める一方で、より長期的に安定した業績が期待できる会社を選びたいということであれば、より営業収益における手数料や金利収入の比率が高い会社を選ぶのが良いかも知れません。
モルガン・スタンレーや、商業銀行系でいえばJPモルガン、バンク・オブ・アメリカ辺りですね。
Bloomberg記事:ゴールドマンとモルガンSの明暗鮮明、戦略の分岐で-10~12月決算
収益の安定性
ここでは、以下の3つの収益指標を見ていきます。
- 粗利益率:(売上-売上原価)÷売上
- 営業利益率:営業利益(売上利益 ー 販売費及び一般管理費)÷ 売上
- 売上純利益率:当期純利益 ÷ 売上
これらはいずれも、売上からどの程度の割合の利益を生み出せているかを測る指標で、高いほど経営効率が高いこと、つまり効率よく利益を出していることを示します。
ただし、ゴールドマン・サックスは損益計算書の構造上、費用項目が明確に区分されていないため、利益率は税引前利益率と売上純利益率を見ていきます。
市場環境の影響を受けやすいトレーディングや投資が中心のため、利益率はかなり不安定です。
財務の健全性
ここでは、財務面の健全性を確認します。
① 銀行の財務健全性は規制で厳しく管理されている
米国の銀行は、信用提供などを通じて金融システムや実体経済に多大な影響を及ぼすことから、厳しい資本規制が課されています。
具体的には、リスクアセットに対する自己資本の割合が一定水準を上回るよう求められています。
ここでは細かい内容の説明は省き、他の米国大手銀行グループと比較することで、健全性を確認していきましょう。
② JPモルガンの財務健全性は他の米銀と比べても高い
下のグラフは過去3年間の自己資本比率(Total Capital Ratio)を示したものです。
米国の資本規制では、大手銀行はこの比率を一定水準以上に維持することが求められています。
ゴールドマン・サックスはモルガン・スタンレーよりも若干低いですが、要求水準はクリアしており、財務健全性は十分高いといえます。
投資パフォーマンス
最後に、投資パフォーマンスについて整理します。
過去10年間のパフォーマンスはS&P500と同程度
2022年までの過去10年間の投資パフォーマンス(配当考慮済み)を見てみましょう。
S&P500やS&P金融セクター指数と同様、概ね約3倍の水準に上昇しており、過去のパフォーマンスを見る限りは市場平均と同程度です。
(配当は再投資したと仮定)
① 2023年3月は銀行の信用不安で10%以上の落ち込み
下のグラフは2023年4月までの半年間の値動きを示しています。
シリコンバレー銀行の破綻や地銀の取り付け騒ぎなど、一連の銀行の信用不安で3月に大きく落ち込んでいます。
(SBI証券ホームページより)
② PERは割安だが不安材料も
2023年4月時点での予想PER(予想利益に基づくPER)は約8倍と、S&P500の約18倍、モルガン・スタンレーの約11倍と比較するとだいぶ低い水準です。
また、下のグラフは実績PERと株価の推移を示したものですが、PERは10倍近辺をウロウロしながら少しずつ低下しているように見えます。
ビジネスモデルが不安定であり、事業転換に遅れていることを踏まえると、ゴールドマン・サックスの将来性に対する投資家の期待が徐々に失われており、PERに反映されているとも考えられます。
個人的には、しばらくは様子を見た方が賢明だと思います。
③ 予想配当利回りは3%近い水準
予想配当利回りは約2.9%(2023年4月時点)で比較的高めです。
過去からの推移を見ると、EPSの上昇と共に配当金もここ数年は大きく増えています。
ただし、配当狙いで行く場合に気を付けておきたいのが、EPSが落ち込んだ2010年に若干ではあるものの減配している点で、今後もその可能性には注意が必要です。
まとめ
ここまで、ゴールドマン・サックスの成長性・収益性・健全性、投資パフォーマンスについて見てきました。
まとめると、ゴールドマン・サックスの収益の柱はマーケット・メイキングや投資銀行など、市況に左右されやすい事業であり、銀行株なら手数料や金利収入など比較的安定が見込まれるモルガン・スタンレーや商業銀行グループを狙いたい、と考えます。
このような銘柄分析のほか、銘柄の選び方や投資の勉強方法など、投資を始めたばかりの方に向けて有益な情報をまとめています。
ぜひご覧ください。
なお、最後となりますが、この分析は私の主観的なものであり、投資の世界に絶対はありませんので、参考程度に見ていただき、投資判断は自己責任でお願いします。
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※この記事に記載した内容はブログ運営者の個人的な意見やアイディアを述べたものであり、専門的なアドバイスを示すものではありません。特定の銘柄への投資を推奨するものではなく、投資の判断・実行は自己責任でお願いします。